実技試験桜組のメンバーを募集します令和2年後期保育士試験解説シリーズ②「社会福祉」問15

2020年10月29日

令和2年後期筆記試験問題解説シリーズ①「社会的養護」

こんばんは。桜子先生です。

今日から「前期試験桜組2021」というカテゴリを作りました。
このカテゴリでは、来年の前期試験対策の内容をお届けします。


さてさっそくですが、
先日終わったばかりの筆記試験について、
ここは要注意だよ、という問題をとりあげて解説をしていきます。
何回かシリーズにしていきますね。
また皆さんからの解説リクエストもお受けします。
この記事のコメント欄を開放していますので、
ご希望の問題がありましたらコメントにお残しください。
ただ現在まだ正答が出ていませんので、
それをご了承くださいね。


さて、今日のテーマは「法改正」。
この後期試験では、色々出されるべき法改正があったのですが、
蓋をあけてみればあんまりでなかったな、という印象です。
そんななかでも「社会的養護」問9をご紹介します。


問9 次の【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。
【事例】
児童養護施設に勤務するJ保育士(25 歳、男性)は、実父からの激しい身体的虐待が原因で
入所 したK君(17 歳、男児)を担当している。
ある日、職員不在の場面でK君が同じ施設に入所している 同室のL君(16 歳、男児)の
携帯電話を無理矢理に取り上げ、使い始めた。
取り返そうとしたL君 に対して押し倒し、3回蹴飛ばした。
L君は悲痛な表情でJ保育士に事情を伝えに来た。
すぐにJ保 育士はK君とK君の自室で2人で話をすることにした。
J保育士の注意に対してK君は悪びれる様子 もなく、
「あいつ、うざいんだよ。職員に言いつけやがって。今度殺してやる。」と話した。
日頃から 他児に対して暴力を振るうことが多かったK君に対して
J保育士は腹を立て、K君の胸ぐらをつか み、
「自分がしていることを分かっているのか。反省しろ。」と怒鳴った。
その後、罰としてK君にそ の日の夕食を与えないこととした。


【設問】
J保育士のこの対応の説明として、適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。

A 「民法」により親権者の懲戒権は認められており、
  時には子どもの行動を正すために、胸ぐらを つかみ、怒鳴ったり、
  食事を与えない程度であればしつけとして認められている。

B K君の行動は実父からの虐待が要因として考えられるため、
  J保育士のこうした対応は暴力を肯 定することにつながるとともに、
  フラッシュバックを生じさせる可能性がある。
C K君の行動は実父からの虐待が要因として考えられるため、
  J保育士はK君の暴力を肯定するべ きであった。
D J保育士のこの対応は、被措置児童等虐待にあたる可能性があるため、
  K君を含めこの状況を発 見した者は児童相談所等に通告することとされている。


これの正しい選択肢はBとDですね。
読めばなんとなく正解がわかります。
ただこの問題で注目すべきは、選択肢Aです。

Aを読むと、J保育士の行動は懲戒からは外れているのでアウト、
だから✖、と判断してしまいがちです。
でもこの選択肢は、そこが意図ではありません。

こここそまさに法改正の範囲でした。
2020年4月1日施行の「児童虐待防止法」「児童福祉法」の改正です。

「児童虐待防止法」第14条第1項
児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。


「児童福祉法」第47条第3項
児童福祉施設の長、その住居において養育を行う第6条の3第8項に規定する厚生労働省令で定める者又は里親は、入所中又は受託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童等の福祉のため必要な措置をとることができる。ただし、体罰を加えることはできない。


選択肢Aは、この2つの法改正が理解できているのかを問うものでした。
つまりJ保育士の懲戒を超えた暴力だから✖なのではなく、
親権者の懲戒権を理解し、
その上でここの法改正のポイントである
児童のしつけに際して、体罰を加えることなどの必要な範囲を超える行為で
児童を懲戒してはならない
」を押さえておかなければいけませんでした。


さらにこの選択肢Aは、実は色々な要素がつまっています。
まずAでは親権者の懲戒権について示しています。
これはもちろんその通りなのですが、
児童養護施設における児童の親権と懲戒権は誰がもっているのか?を
考える必要があります。
児童養護施設の児童は、
①親が親権をもっている=親権者は親
②親が親権をもっていない=親権者は施設長
の2種類の状態です。
そして親権者には懲戒権がありますが、
児童養護施設において親権がある児童に対する懲戒は、
「児童福祉法」により、施設長も行えることになっています。


選択肢Aを一般的な話と解釈することもできますが、
もしこの事例に沿って解答するとしたら。
選択肢Aでは施設長は出てきておらず、
J保育士が主役だと思うのですが、
施設の職員には懲戒権はありません。
ここでおかしい、と思ってほしいです。
したがってJ保育士について、懲戒権がどうこう、というのは間違っています。



以上、いかがでしたか?
この選択肢は、法改正がポイントだ、って気づけてたら嬉しいです。



さて今後も、こんなふうに、
単なる解説ではなく、どういうところが根拠で、
何を注意しなければいけなかったのか、をテーマに
問題を抜粋して解説していきます。
皆さんが解説してほしい問題がありましたら、
コメント欄からお知らせください。


ところで今回の試験では、
私は1問だけセンターに疑義申立てをしています。
ある程度ばれちゃうから先に言いますけど、
「子ども家庭福祉」の問5です。
月曜に解いたときに、すぐおかしいと思いました。
ここを覆せるかどうかわかりませんが、
がっつり根拠を書いて送っていますので、
去年「社会福祉」を1問覆せたように、
今回もなんとかなればいいなと思っています。





実験でブログ村ランキングに参加してみることにしました。

よろしければクリックをお願いいたします。
にほんブログ村 資格ブログ 保育士試験へ




hoikushshisakurako at 22:03│Comments(4)・前期試験桜組2021 | ・社会的養護

この記事へのコメント

1. Posted by rinrun   2020年10月30日 00:03
保育実習理論の問1の解説をリクエストさせて頂きます。
楽典支部で解法をマスターしたつもりでしたが、Bの右手の音からはB♭メジャーを導出することができませんでした。
私のような初学者が知らない暗黙のメソッドが在る気がしています。
もしよろしければ、ご検討頂ければ幸いです。
2. Posted by まーみー   2020年10月30日 16:08
いつもありがとうございます!
とても初歩的で申し訳ないのですが、桜子先生のPDFを基に、今回の社会福祉の問15.16で聞きたいことがあります。

問15のAの文章ですが、児童養護施設の苦情解決は「社会福祉法第82条の社会福祉事業者の経営者の努力義務」となっていて、児童養護施設はこれに該当するため正しい。
この問15は、苦情解決2にある「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第14条の3の窓口と職員以外の関与」とは別の問われ方との認識で合っていますか?
この問題がきたときに、児童養護施設は後者の法律で
3. Posted by まーみー   2020年10月30日 16:18

すみません、文章作成中に送信されてしまいました。

いつもありがとうございます!
初歩的で申し訳ないのですが、桜子先生の4-13のPDFを基に、今回の社会福祉の問15.16で聞きたいことがあります。

●問15のAの文章ですが、児童養護施設の苦情解決は「社会福祉法第82条の社会福祉事業者の経営者の努力義務」となっていて、児童養護施設はこれに該当するため正しい。
この問15は、苦情解決2にある「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第14条の3の窓口と職員以外の関与は義務」とは別の問われ方との認識で合っていますか?

この問題がきたとき、児童養護施設は後者の法律で苦情解決の窓口があるから×にしました。
でも児童福祉施設は前者の法律に当てはまる...?どちらだか分からなくなってしまい、ここが混同していて今も理解出来ていません。


●問16のAですが、4-13のPDFの情報提供の欄に「社会福祉法第75条の社会福祉事業者の経営者の努力義務」となっていて、問題の文章は児童の福祉に関してだから、この社会福祉制度のサービスとは別物だよね?と思い、市町村は児童の福祉の情報提供は義務であると思ったものの、社会福祉法と児童福祉法が混同していて、社会福祉法では情報提供は都道府県が努力義務だから市町村も努力義務?と訳分からなくなってしまい、時間ギリギリまで悩み、×にしてしまいました。


私の単純な理解不足だと思いますが、と時間ありましたら解説頂けると有り難いです。宜しくお願い致します。
4. Posted by ちろる   2020年10月31日 20:37
5 1点気になる箇所がありコメントさせていただきます。子ども家庭福祉の問10です。
記述の2つ目B『子どもを預かる場所は原則として会員間の合意により決定する』について
厚労省のファミリーサポートセンター事業のリーフレットには預かり場所についての記載はないため、いくつかの市町村の事業案内を見ましたが、預かり場所は原則預かり会員の自宅という印象をうけます。
インターネット上でみつけた厚労省から都道府県宛に出された事業の改定に関わる書類には、『子どもを預かる場所は、会員の自宅、児童館や地域子育て支援拠点等の施設、その他子どもの安全が確保できる場所とし、両会員間の合意により決定すること』とありましたが、この記述は場所を指定した上で会員同士の合意により決定するという記述なので、Bの何も場所の指定なく、会員同士の合意により決定するというのとは違うと思うのです。(後者であれば、委託会員の自宅でも可能であるはずですが…)
また選択肢3つ目C『病気の子どもの預かりはできない』について
ファミリーサポートセンター事業の基本事業では病児の預かりの記載はなく病児・緊急対応強化事業で記載されているもので、厚労省のリーフレットには一部の市町村では病児・病後児の預かりも実施していますという書き方です。厚労省の平成29年度報告で病児・緊急対応強化事業の実施は基本事業 863市区町村に対して151市区町村と少なく、基本事業を実施していても市町村によっては実施していない場所が多く、できないとは言えないけれど、できるとも言えないのではないかと思います。
この2つを考えると答えが出せないのです。
素直に考えられずすみませんが解説お願いします。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
実技試験桜組のメンバーを募集します令和2年後期保育士試験解説シリーズ②「社会福祉」問15